「黒き猫」(くろきねこ) 重要文化財
1910年 第4回文展出品作品 永青文庫蔵
岡倉天心の考えを完成させたと言える作品です。朦朧体の技法を経て、日本美術の伝統と西洋画の融合に成功した作品です。
はじめは、雨中に傘をさした美人を描くつもりであったのが、モデルとなるはずであった、千代夫人の体調が思わしくなく、結局ものになりませんでした。やむをえず近所の猫を借りてきて、5日ほどで仕上げたのがこの作品だと言われています。
柏の木の曲がりくねった構成的とも言える形態、葉に金泥を使い周囲に太いくくりの線を用いる描き方などは、樹木の幹の描写とあわせいかにも装飾的です。反対に猫はかなり写実的に措かれており、両者の対照的な描き方が面白い作品です。平面的で装飾性の強い作品ですが、金の配色と黒い猫(墨)の対比は、新しい琳派と呼ぶにふさわしい作品です。 |